交通事故で被害者が十分納得の和解成立


1 2017年7月、仙台地方裁判所において、ある交通事故事件で被害者が十分納得できる和解が成立しましたので、報告します。
2 事案は、2012年5月末の深夜、アルバイト帰りの被害者(当時23歳)が自動二輪バイクで交差点を直進中(信号青)、折から対面道路を走行し前方不注視のまま交差点を右折しようとした加害車両に右側面衝突されたというもので、その結果被害者は右大腿骨骨幹部開放骨折等の重症を負い、事故後約1年間で3回入院を繰り返し(入院日数78日間)、症状固定まで約1年2ヶ月間通院治療を余儀なくされました。被害者は、ちょうど事故当日ある大手メーカーの一次試験(筆記試験)を終えたばかりで、後日面接試験の通知が届きましたが怪我のため受験は叶いませんでした。
3 本件の争点は、主に、1入通院慰謝料(実日数基準か通算基準か、被害者が重傷を負い生死の淵を彷徨ったこと、就職試験の機会を逸したことを加味するか)、2後遺症の有無(右下肢の手術痕が14級に該当するか非該当か。労災では14級認定)、3過失割合(加害者95:被害者5か、加害者85:被害者15か)でした。
4 弁護士は2016年3月に相談を受けましたが、保険会社の後遺症を認めない方針は固く、その他の点でも双方の開きが大きいため(いわゆる交通事故ADRもあっせん停止になっていました。)、訴訟提起の方針を決め、2016年6月被害者(原告)代理人として総額金639万円の支払を求める損害賠償請求訴訟を仙台地方裁判所に提起しました。その中で原告は、1について通算基準に加え生死の淵を彷徨ったこと、就職試験受験の機会を逸したことから50%割増の金322万円を主張、2については14級相当の慰謝料金110万円の外に14級の逸失利益金122万円も主張、3については95:5を主張しました。
  これに対する保険会社側の主張は、1については実日数基準にもとづき金153万円、2については非該当、3については85:15を主張しました。
5 そして、約1年の審理の後である2017年6月仙台地裁から和解案が双方に提示されました。その内容は、1については保険会社主張の実日数基準を排斥し通算期間で計算し、かつこれに就職試験受験の機会を逸したことを加味して金240万円(ただし、5割増は否定)、2について右下肢の手術痕を後遺症と認め後遺症14級認定し慰謝料金110万円。ただし、下肢醜状痕なので後遺症の逸失利益は認めない。3については95:5。それ以外の治療費、通院費、休業損害等を合わせると合計金403万円になり、そこから労災等からの既払金を差し引くと金276万円になります。そして、今回の和解案が素晴らしいのは、「諸般の事情」を考慮して結局金350万円での和解を勧告したことです。おそらく、事故から和解提案時まで約5年の月日が経過していることを考慮したものと思われます。
  上記和解提案は被害者にとって十分納得がいくものでしたので全く異論はありませんでした。一方、保険会社側では検討に時間を要したようですが、結局和解提案に応じることになり今般の和解成立に至ったものです。
6 保険会社側は示談交渉の段階で相当低い水準の示談提案をするのが普通です。そのようなときは泣き寝入りせずに弁護士に相談するのが大事です。弁護士を依頼して保険会社側と示談交渉をするか、場合によってはさっさと裁判所に訴訟を提起した方が早く、かつ被害者に十分納得がいく解決が図られる場合が多いと思います。困ったときはともかく弁護士に相談することをお勧めします(文責・菊地)。


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