東京電力・福島原発事故に対する損害賠償請求について


 福島原発事故による放射能被害は宮城県にも及んでいます。

 本年7月、県内産の稲わら・肉牛から放射性セシウムが検出され、肥育(畜産)農家は一時出荷停止に追い込まれました。風評被害も深刻です。 今後同種の風評被害が農産物一般、魚介類等に広がることが懸念されています。県内の観光業者の風評被害も思った以上に深刻です。

 このような被害は東京電力に全面的に賠償させなければなりませんが、請求するにあたりいくつか注意が必要です。


 1つは、政府の原子力損害賠償紛争審査会が本年8月5日に公表した、いわゆる「中間指針」についてです。
 この「中間指針」は、農林産物、畜産物、観光業等について宮城県を原則として賠償すべき県に入れていません。肉牛の風評被害も平成23年7月8日(マスコミで報道された日)以後のものしか認めていません。
 しかし、肉牛の風評被害は福島原発事故があった3月11日以後から始まっていました。福島県の隣県に位置する宮城県が放射能被害または風評被害から無事なわけがありません。
 本来、不法行為においては事故と相当因果関係のある損害はすべて賠償されるべきものです(「中間指針」も、一般論としてはこのことを認めています)。
 したがって、現実に損害を受けている場合は、「中間指針」にかかわらず、臆することなく東電に請求しましょう。東電に被害を全面的に賠償させることが、国と電力会社に原発がいかに高コストであるかを自覚させ、「原発ゼロ社会」を実現することにつながります。


 2つめは、請求する際の書式です。
 東電より福島県から県内に避難されている個人あて、県内の法人・事業主あてに請求書式が届き、どのように書いたらよいか悩んでいる方も多いと思います。
 本来、東電は放射能被害を引き起こした加害者です。加害者が一方的に賠償基準を設定し、書式も勝手に決め、請求期限も2か月をめどとこれまた勝手に決めています。
 これらはすべて東電の都合にすぎず、これに従う法的根拠は全くありません。請求書は任意の書式でよいのです。
 原発事故がいまだに収束の見通しが立たず被害が終結していないのに、一方的なやり方で手続を急ぐ東電の姿勢には反省の態度が見られません。低い賠償水準で手を打とうという魂胆が見え見えです。
 原発再稼働が画策される今、加害者と被害者のどちらが主導権をとるかのせめぎあいの時期です。時効期間は3年あります。拙速な請求は被害者の不利益になります。
 ただし、当面の生活資金、事業の運転資金が底をつく厳しい状況にある被害者の中には、早く賠償金を得るために東電の書式で請求せざるをえないという方もいらっしゃるでしょう。
 その場合、いくつか注意が必要です。
 つまり、
①一部請求であることを明示する(従前、東電書式の「合意書」には「今後一切異議申立、追加請求はしない」との文言が入っていましたが、最近この文言は削除されたようです)
②納得できない記載は二重線で削除しそこに自分のハンコを押印する
③領収証等は原本を添付せずコピーを添付する
④記入し終わったら提出する前に請求書をすべてコピーして手元に保管する
⑤提出する前に自由法曹団の弁護士や次に述べる各団体にチェックしてもらうことが必要です。

 3つめは、各人がバラバラに請求するのではなく、できれば集団的に対応すべきことです。
 東電の分厚い説明書を読んでも、東電の担当者の話を聞いても、一般の方がすぐに理解するのは困難でしょう。
 そこで、県内の肥育農家の方たちは農民連という団体に結集し、損害の計算会を自主的に開催しながら東電に対する請求を毎月行っています。その際、自由法曹団の弁護士が側面支援を行っています。
 また、民主商工会という団体も、自由法曹団の弁護士の関与の下、集団で自主的な計算会をこれから行おうとしています。
 皆で勉強しながら、経験を交流し合いながら請求書を作成し東電に対し全面賠償を求める、そして東電には個人では対応せず、集団で対応する、これが最も確実な請求の仕方と思います。
 このような請求のやり方を希望される方は、各団体にご紹介いたしますので、当事務所までご連絡ください。

 東電に対して、臆せず、集団的に損害賠償請求をしていきましょう。
(菊地)


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