DV防止法・ストーカー防止法の改正


平成25年6月に,DV防止法が改正され,「同居の交際相手」からのドメスティック・バイオレンスもDV防止法の対象となることになったとの報道がされています。
http://www.asahi.com/national/update/0626/TKY201306260566.html
また,ストーカー防止法も,執拗なメールを「つきまとい行為」にあたるとする等の改正がなされました。

DV防止法の対象範囲の拡大
DV防止法は,これまで,配偶者間(事実婚含む)の暴力および生命等に対する脅迫についてのみ適用されていました。配偶者間においては,保護命令(6カ月間の接近禁止,2か月間の退去命令)によって,加害者の接近を防止することが可能でしたが,事実婚に至らない単なる同棲の場合は,ストーカー防止法によって対処するしかありませんでした。
 
DV防止法の利点
DV防止法の利点は,被害者本人が,警察官または配偶者暴力相談支援センターへ被害の相談をしたのち,自ら保護命令を家庭裁判所に申し立て裁判所の判断をあおぐことが出来る,当事者主導の制度という点です。これに対し,ストーカー防止法は,警察本部長の警告を経て,公安委員会の禁止命令や仮の命令といった制度によりストーカー行為が禁止されるという,当事者に申立権のない制度であったため,利用件数も極めて少数にとどまっていました。
DV防止法は,加害者に取ってみれば,行動の自由・居住の自由など重要な権利に対する重大な制約を課されるものですので,むやみにその対象を広げることについては,慎重になるべきとの指摘もされているところです。しかし,実質的には同居の交際相手の場合でも,生活の本拠地を共にしていれば,当事者の申し立てによる接近禁止,退去命令の必要性は事実婚の場合と同様であることから,今回の改正は妥当であると考えます。

ストーカー規制法のつきまとい行為とは?
一方,これまでストーカー規制法がつきまとい行為として指定していたのは,恋愛感情やそれに基づく怨恨等をみたす目的で,被害者(親族等も含む)に対して行う次の8つに分類された行動でした。

(1)つきまとう行為,待ち伏せる行為,進路に立ちふさがる行為,住居等の付近で見張りをする行為,並びに住居に押し掛ける行為
(2)監視行為の告知等
(3)面会・交際その他,義務のない行為の要求
(4)著しく粗野又は乱暴な言動
(5)無言電話や連続した架電,FAX送信
(6)汚物の送付等
(7)名誉を害する事項の告知
(8)性的羞恥心を害する事項の告知等

そしてこの8種類の行動(ただし,(1)から(4)については,身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合のみ)を反復して行う場合を「ストーカー行為」として,刑罰の対象としており,メールは含まれていませんでした。
ストーカー規制法が制定された当時(平成12年)ころは,メールのやり取り等は現在ほど一般的ではなく,脅迫等の刑法犯に当たるときは,処罰されていましたが,ストーカー規制法による処罰の対象となっていなかったのです。
 しかし,現在の社会状況に照らし,メール利用者数は立法当時と比較して飛躍的に増加しており,平成24年には,ストーカー規制法施行後最大の2万件にも上り,重大事件においてメールによるつきまといが発生している実情から今回の法改正が実現され,メールもストーカー規制法の対象に含め,より実効性を図ったものといえます。

相談窓口
DV被害者から逃げたり,防止するための第一次的な相談窓口は原則として各都道府県等の配偶者暴力相談支援センター・警察であり,ストーカーを受けて加害者を罰したい,防止したいという場合の相談窓口は第一次的には警察となりますが,いずれも,相手に対する損害賠償請求・慰謝料請求,その他の金銭トラブルなどの民事事件や離婚等の家事事件はこうした相談機関では解決できませんので,あわせて弁護士に相談されることをお勧めします。こうした案件については,当事務所では必要に応じて,複数人で対処することとしております
(木山)


お問い合わせはこちらから

@ichiban_lo からのツイート