医療過誤事件の特徴
元気だった家族が検査でひっかかったために病院に入院し手術を受けたが、直後に急死してしまった、この場合のご遺族の悲しみはいかばかりかと思います。病院側の検査ミスや手術ミスを疑うのは当然でしょう。
しかし、医療過誤事件は簡単ではありません。高度に専門性が要求される事件ですので、まずは本当に医療ミスなのかどうか事前調査が必要です。証拠はほとんど病院側にありますので、証拠保全手続によりカルテ類、画像類を証拠として押さえる必要があります。証拠として入手したら、次にそれを専門の協力医師に見てもらい、アドバイスをもらう必要があります。そして協力医師から担当医師のミスであるとの判断をもらってから初めて、病院側と示談交渉、調停、訴訟といった法的手続に踏み出すことになります。協力医師が名前を出してくれる場合は、鑑定意見書の作成を依頼します。このように、高度の専門性が要求されるのが医療過誤事件の特徴です。協力医師確保のために当事務所は、名古屋の医療事故情報センター、大阪の医療事故調査会等とネットワークを築いています。
医療ミスかな?と思ったら、お気軽にご相談ください。
カルテの取得方法
医療過誤事件はまずカルテを取得することから始まります。取得方法には、任意開示と証拠保全の2つがあります。
(1)任意開示
患者が病院に対し直接カルテの開示を請求する方法です。病院は患者の開示請求に対し開示する義務があります。通常病院所定の申請書に記入して請求します。コピー代は患者負担です。病院の規模やカルテの分量によりますが、開示まで1~2ヶ月かかります。しかし、この方法では病院によるカルテの改ざん、編集のおそれがありますので、医療過誤事件ではこの方法はお勧めしません。
(2)証拠保全
本案訴訟の前に証拠を収集する手続です。具体的には、裁判所に証拠保全の申立を行い、裁判所が証拠保全決定を出して、裁判所(裁判官、裁判所職員)が実施日に抜き打ち的に病院に乗り込み、病院にカルテを提出させ、その場でカメラ撮影、コピーをして証拠を保全するものです。通常、申立代理人も立ち会います。当然のことながら、病院には事前に実施日を知らされず、知らされるのは実施時刻の1時間半くらい前です。分量によりますが、時間は通常午後一杯かかり、午前・午後丸一日かかる場合もあります。
協力医の判断
カルテを取得した後は、そのカルテを読み・分析して本当に医療過誤なのかどうかを判断しなければなりません。しかし、素人にはこのような判断は無理ですので、協力医師に判断を仰ぐことになります。当事務所の場合、協力医師は名古屋の医療事故情報センター、大阪の医療事故調査会で紹介してもらっています。
協力医師が決まったら、まずカルテを送付し読んでもらいます。そのうえで担当弁護士が協力医師と面談します。面談のために、東京、大阪、九州等に飛んでいきます。そして、協力医師から医療過誤かどうかについてレクチャーを受けます。その時点で「立件は無理である」との判断をいただく場合が相当数あります。「過誤である」、または「過誤である可能性が高い」との判断をいただいたときは、当該協力医師に意見書を書いてもらえるかどうかを打診します。立場により名前を出せない協力医もいます。
医療過誤事件の解決方法
(1)示談交渉
直接病院と交渉することです。しかし、示談交渉で解決することは通常ないです。
(2)民事調停
簡易裁判所に病院を相手方にして調停の申立をすることです。調停ですので、話し合いによる解決です。調停委員2人が間に入って調整してくれます。しかし、病院が責任を拒否すれば不調になります。
(3)民事訴訟
患者側が原告になって病院を被告に裁判所に訴えを提起することです。民事訴訟では原告に主張・立証責任がありますので、訴訟提起できるのは協力医の意見書、医学文献等原告の主張を裏付ける相当な根拠がある場合に限られるでしょう。
弁護士に依頼するメリット
医療過誤事件は、高度に専門的な事件です。医学的にもそうですが、病院側の過失の有無、因果関係の有無等法的にも難しい判断が必要です。協力医師とネットワークを有する弁護士への依頼は必要不可欠と言えるでしょう。