労働審判でタクシー運転手の未払残業代・深夜割増賃金を支払わせました!


タクシー会社の乗務員組合からご相談を受けました。
タクシー会社にはよくある賃金規定ですが、この会社では、「売上金額の20%を時間外割増賃金および深夜労働割増賃金として歩合給に含め支給する」と定めています。一見何の問題もないように見えます。

しかし、実際には、時間外・深夜勤務を命じた場合と、命じなかった場合の賃金は、売上額が同じであれば、常に同額となるように設定されていました。つまり、会社は現実には営業収入の50%という歩合給しか乗務員に支給しておらず、時間外・深夜割増賃金の支払は一切していなかったのです。
こうしたシステムは、割増賃金の支払を免れるもので、使用者に割増賃金分の経済的な負担を課すことによって、時間外・深夜労働を抑制するとの労働基準法37条の趣旨に反するものです。

最高裁判所は、こうした場合には割増賃金の支払がなされていないと判断しています(高知県観光事件、平成6年6月13日判決)。すなわち、労働者に支払われる歩合給に関し、時間外及び深夜労働が行われた時も金額が増加せず、また歩合給のうちで通常の労働時間に当たる部分と時間外及び深夜労働の割増賃金部分が判別できない場合は、割増賃金が支払われたものとすることはできず、使用者は割増賃金規定に従って計算した割増賃金を別途支払う義務を負うとされています。また、下級審においても、本件とほぼ同種の事案で割増賃金の支払いが命じられています(札幌地方裁判所平成23年7月25日判決)。

労働組合は会社に対して、割増賃金の支払いを請求してきましたが、会社が応じないため、この度、当事務所にご依頼され、労働審判をすることとなりました。

労働時間を立証するタイムカード等は全て会社側が保存しており、乗務員は把握していなかったため、立証に手間がかかりましたが、最終的には会社がタイムカードの開示に応じ、ほぼ満額での支払いを内容とする和解がまとまりました。

こうした違法な労働実態はごく当たり前に存在しています。
ぜひ諦めずにご相談においで下さい。(小野寺・渡部)


お問い合わせはこちらから

@ichiban_lo からのツイート