残業代請求の豆知識


当事務所では,労働事件の相談が多いのですが,最近残業代請求の事件が増えていますね。
残業代を請求する際によくあるご相談について,解説いたします。

Q.証拠がないと請求できない?
 残業時間に使用者と労働者の間で争いがある場合,働いた時間について証拠によって立証することができなければ,残業代の請求はできません。
 まだ使用者のもとで働いている方が残業代を請求するためには,タイムカードや業務日誌,運転手の方はタコメーターなどコピーしておく必要があるでしょう。できれば業務内容までわかる資料があればなおいいです。

 では,仕事を辞めてしまい,証拠を集めることが出来ない方はどうすればいいでしょうか?

 その場合には,裁判の中で使用者に対してタイムカードなどの証拠を提出させるのは一つの方法ですが,改ざんされたり,捨てられたりされるおそれもないとは言えません。そのような恐れがある場合には,裁判所に証拠保全を申し立てるという方法もあります。 
  証拠保全とは,訴訟で訴えようとしている使用者に知られずに裁判所に申し立てることができ,裁判所が先にその証拠を押さえて改ざんを許さないという手続です。タイムカードの他,出退勤のカード等のデータ等があれば,それを対象に保存することになるでしょう。
 具体的にそこまでの手続が必要かどうかは,手持ち資料の有無と相手方との交渉経緯にもよりますが,確実に証拠を押さえたい時には,証拠保全の利用も一つの方法です。

Q.会社が倒産したら,未払い賃金は払ってもらえない? 
 企業が倒産したために賃金が支払われないまま退職した労働者が,企業の破産手続開始等の申立日又は倒産の事実についての認定申請日の6か月前の日から2年の間に退職した場合には,未払となっている賃金の一部を立替払いしてもらえる制度があります。この制度は,賞与等を含まない定期賃金の8割か年齢によって定められた限度額のいずれか低い金額を支給するとの制限があり,給与の全部が支払われるわけではありませんが,会社の経営状態が悪くても,請求する余地はあります。

Q.付加金って何? 
 労働基準法は,休業手当,時間外割増賃金,解雇予告手当等の一定の請求を裁判上行う場合,本来の請求額の倍額になる付加金制度の支払いを定めています(労基法114条)。これは,悪質な未払いを続ける企業に対し,ペナルティとして課すもので裁判所の裁量によって支払い命令が出されますので,諸般の事情を考慮し,悪質な未払いではないと判断された場合等,裁判所が付加金を命ずることが不相当であると判断した場合,付加金の支払い命令は出ないこともあります。


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