3回にわたる一方的賃下げ、賃下げを受け入れなければ解雇!
平成27年10月2日、仙台地方裁判所で審議されていた「3・11福島原発事故の復旧廃炉作業で、一方的賃下げと解雇、危険手当不払い事件」が、2年3ヶ月のたたかいで、勝利的和解が成立しました。
この事件は、「3・11東京電力福島原発事故」直後の2011年7月から、大手ゼネコンのA社が元請となり、一次下請け企業(B社)、二次下請け企業(C社)という重層下請け構造で、C社の雇用で放射線量の高い中、福島第1原発敷地へ燃料を運搬する業務に従事していた2名の労働者が、偽装請負や一方的賃金の引き下げ、ピンハネ、危険手当の不払い、解雇という幾重にもわたる仕打ちに、原発労働者の権利を守るために、2013年7月に仙台地裁に提訴した事件です。
東京電力・A社・B社のいずれもが危険手当の存在を認める
原発関連作業に従事する労働者に支払われるべき特殊勤務手当(危険手当)は、東京電力が国会でも証言しているように、本来であれば労働者に直接数万円支給されるべきものです。しかし、実際には、危険手当は労働者には支給されないか、少額の支給にとどまっております。そこで、弁護団は、弁護士法23条の2に基づき、東京電力及びA社、B社の3社に対する「照会申出書」を出し、いずれの企業からも、「危険手当の存在を認め、契約金に含まれている」との回答を得ています。ブラックボックスというもいうべき危険手当の存在自体を企業側が明らかにしたことは、危険な原発関連作業に従事する労働者にとって勇気を与えるものとなりました。
元請と下請といった企業側の事情を労働者に転嫁することは許されない
事実上、国の事業ともいうべき原発廃炉作業で、元請や第一次下請は、「注文書」で好きなように下請単価を操作し、その負担を末端の労働者に押しつけている実態が明らかとなりました。請負契約も名ばかりで、直接契約者であるC社は、業務内容も正確に把握しておらず、内部被ばく線量検査・ホールボディカウンター(WBC検査)も認識がないという偽装請負も明らかになりました。さらに労働契約書には、後付で、「原発日額は線量による」という金額項目を書き入れていたことも判明しています。
和解の内容は、一度決められた労働契約の内容が、たとえ元請が下請に支払うべき契約金額を減少させたとしても、このような企業間の事情により減額するといった「労働者への転嫁」が許されないとの判断をしたことを意味しております。しかも、賃金の引き下げに対する異議申立に「解雇」したことに対する逸失利益へ言及したこと、危険手当の存在など、原告側の思いが詰まった和解結果となりました。
提訴した労働者たちは、見えない放射能の恐怖と不気味さを感じながらも、「同じ東北の人間として少しでも世の役に立てるならば、福島の人たちが安心して住めるようになるまでがんばりたい」という、一大決心をして原発の現場に入ったので、その思いを少しでも訴えることが出来たと喜んでいます。
原発関連で働いている労働者の多くは泣き寝入りを強いられています。今回の裁判闘争はそういう労働者に対し励ましと勇気をもたらすものになりました。ご支援をいただいた多くのみなさんに感謝申し上げます。
以上