宮城県内の現役自衛官が、ハラスメント被害の救済を求めて、2025年10月23日、仙台地方裁判所に、国家賠償請求訴訟を提起し、26年1月8日に第1回裁判が始まりました。次回裁判は3月19日午後1時30分です。
自衛官の人権を守る大切な裁判です。皆さまのご支援をお願いします。
【事件の概要】
原告は、2006年に自衛隊に入隊しましたが、入隊直後から、上司である被告A・Bから、「女みたい」、「WAC(女性自衛官)より可愛い」等の発言を受けるようになり、職場の忘年会で一人だけ女装での参加を強要され、キスをされたり乳を揉まれたり、尻に性器を押し付けられる等の行為をされました。また、原告は、被告A・Bから、職場において服の上から棒状の工具やドライバーなどで局部をこすられ、逃げようとすると素手で局部を殴られるなどの暴行や、整備工場内の天井クレーンから吊り下げられるなどの暴行を受けるなどの複数の暴行行為や、その他多くの暴言を受けています。
このような被告A・Bからの連日の度重なるセクシュアルハラスメント行為、パワーハラスメント行為、暴行及び暴言を受け、原告は2021年ころPTSDを発症したため、被告国に対し、国家賠償・安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求をするとともに、被告A・Bに対しても不法行為に関し損害賠償請求をしている事案です。
【この事件の注目点】
・現役隊員である原告による損害賠償請求です。
・被告国に対してのみならず、暴行をした加害者である被告A・Bに対しても損害賠償を求めています。被告A・Bも現役の隊員です。
【この訴訟の目的】
本件訴訟は、陸上自衛隊所属の現役自衛隊員である原告が、2006年(平成18年)9月に自衛隊に入隊した直後から、上司の隊員らによる重大なセクシャルハラスメント、パワーハラスメント等を受け続け、これによって、長年にわたって著しい精神的苦痛を受けPTSDを発症したことに対して、被告国の責任、さらに、加害者である隊員の個人責任を追及し、原告の被害救済を目的として提起したものです。
この問題は、原告一人の問題ではありません。
自衛隊において暴力・いじめ等のハラスメントが日常的に行われ、これによって多くの隊員が精神疾患を引き起こし、さらに自殺者が頻繁に発生していることは、以前から問題にされています。特に、2022年に、陸上自衛隊の女性隊員・五ノ井里奈さんが、実名を出して、インターネットで部隊ぐるみの性暴力とその隠蔽を公表し、第三者機関による調査と処分を求めたことは、社会に衝撃を与えました。私も参加している「自衛隊の人権弁護団・全国ネットワーク」が2023年に実施したハラスメントに関するアンケート調査には多くの自衛隊員から回答が寄せられ、「密室で上司から殴られる暴行を受け、別の上司に通報した。その後、自分は退職を促され昇進も見送られたが、加害者は何事もなかったように早期昇進している」等の実態が報告されています。
防衛省は、五ノ井さんの告発後、全隊員対象の特別防衛監察を実施しましたが、結果発表では、約26万人の自衛隊員のわずか0.6%の1414件しか申出がなく、他方で、人権弁護団には、「特別防衛監察に被害を申告したにもかかわらず、対応・処分がされず、申立てたことで自分が処分されそうになっている」等の訴えがよせられています。
このようにハラスメント被害は頻繁に発生しているにもかかわらず、多くの被害隊員や家族がそれを公表・告発することは少なく、被害者の多くが泣き寝入りを余儀なくされているのが実態です。その大きな理由は、自衛隊自体にハラスメントを容認する体質があり、その実態解明や改善に取り組まず、それどころか、被害の申告があってもハラスメントを隠蔽していることにあります。
これが自衛隊のハラスメントの実態です。
このような中で、本件訴訟の原告は、現職のまま、自衛隊のハラスメントを告発し、司法の場で闘うことを決意しました。その決意に心から敬意を表します。そして、本件訴訟の審理の中で、原告に対して実際に行われてきたハラスメントの事実を明らかにし、原告の被害救済を実現するとともに、この訴訟を、自衛隊内でのあらゆるハラスメント被害を防止する一助にしたいと考えております。
【原告の訴え】
私は自衛隊に入隊してから受けた各種ハラスメント行為によりPTSD、抑うつ、適応障害を患いました。この精神疾患を患った原因は確実に被告自衛官A・B、そして彼らの加害行為をずっと見逃してきた国、自衛隊にあると思います。
訴状でもある通り被告らは人間とは思えない加害を行い、私のことを人と思っていない奴隷のような扱い、加害行為を数えきれないほど行っており絶対に許せません。それを止めることをしてくれなかった自衛隊も許せません。
訴状にあるのはほんの一部の加害行為であり実際は毎日のように加害行為を受けました。自衛隊のハラスメント調査官に毎日のようにハラスメントを受けたと言っても信じてもらえず自衛隊側の対応にも何度も心を苦しめられました。
ハラスメント調査に関しても不信な対応や隠ぺいもあり納得できる調査ではありませんでした。
調査官の居眠りもありましたし、私から文書や証拠の提出、口頭での聞き取りをしているにも関わらず調査官は『聞いていない、知らない、受けていない認識だった』と私が本当のことを証言しているのに事実がなかったことにされ事案の隠ぺいを図られました。ハラスメントを訴えたら助けてくれると信じ勇気を振り絞り訴えたのにこのような対応ばかりで何度も苦しめられました。
また、ハラスメント調査の内容、対応に納得できないことや疑問点が多々あり、調査官に何度も質問書を送付していますが、1年以上経過した現在も調査官から『答えられない、質問書は受けていない認識だった、裁判に影響が出る』などと逃げられ真摯に対応してもらえませんでした。いたずらに調査を長引かせ、私の精神疾患にも影響の出る対応ばかりで心底残念に思います。
隠ぺい行為は他にもありました。当時の私の上司の1等陸佐に「被告Aはハラスメント行為を概ね認め反省している」と聞いておりました。私は被告が反省していると聞き安心していましたがその矢先に被告Bが被告Aと同じ職場に異動すると聞きました。私は上司の3佐に「なぜ今調査の際中なのに異動させるのですか?口裏合わせが起きたらどうするのですか?絶対に口裏合わせ、もみ消しをするような人達ですよ!何かあったら責任取れますか?異動を止めてください!」とお願いしましたが、上司の3佐から「組織要求だから無理!」と一切話を聞いてもらえず、被告Aと被告Bが同じ職場に揃うことになりました。私が次に話を聞いた時には被告Aは「一切ハラスメント行為を認めない」という証言に変わっていました。やはり口裏合わせをしたのか、何で助けを求めたのに自衛隊は助けてくれないのか、守ってくれないのか、もう死んでもいいやと自殺衝動に駆られました。遺書も書き自殺未遂もして心身が壊れました。
これまでの被告らと国、自衛隊の対応は本当に許すことはできません。ハラスメント行為から一人の人間を守れない組織が国を守れるわけがないと思います。防衛省のトップがハラスメント根絶!と言っても現場レベルでは「昔なら許されたのに、こんなことがハラスメントか」と笑う者も多数存在し、ハラスメントを訴えた者が噂の的となり、何か悪いことをしたかのような環境に陥り、不利益を被るのが実情です。
自衛隊は毎年60〜100人近くの自殺者がおり精神疾患の隊員も多く存在しています。自衛隊は外部に自殺者の公表を行っていませんが、毎年これだけの自殺者が出ているのは様々なハラスメント等が大きく関係していると思いますし、毎年仲間が60〜100人近く亡くなっているのに何事もなかったように平気で勤務している自衛隊の環境は異常で、自衛隊はハラスメントを根絶する気はないと思います。このような自衛隊内での実情を司法の場で明らかにして、被告と国、自衛隊には真実を述べ加害行為を認めていただきたいと思います。
【次回裁判(第2回期日)】
2026年3月19日(木)午後1時30分~仙台地裁3階法廷で行われます。
【裁判傍聴のお願い】
当日午後1時に裁判所1階ロビー(所持品検査の場所)にお集まりください。また、裁判終了後、仙台弁護士会館301で裁判報告集会を行います。
【弁護団】弁護士小野寺義象、弁護士宇部雄介、弁護士小池千尋の3名。
お問合せは、小野寺義象(一番町法律事務所)まで。
(2026年2月17日)


