菊地修弁護士の労働事件レポート(その6)~許すな残業代ゼロ法案


厚労省は残業代ゼロ制度の創設を盛込んだ労基法改悪の法案要綱を答申しています。

これまで私がレポートしてきたとおり、わが国では長時間労働が常態化しています。12時間労働など当たり前です。労働時間の上限規制がないわが国では残業代が唯一の長時間労働の歯止めです。残業代は「1日8h,週40h労働」の原則に違反する使用者に対する一種のペナルティなのです。それがなくなってしまえば歯止めが全くなくなってしまいます。労働者は死ぬまで働かされるでしょう。こんな法案は絶対に許してはなりません。

厚労省は対象を「少なくとも年収1000万円以上」と言っていますが(当初は「1075万円以上」と言っていた)、いったん導入されればどんどん拡大されるのは目に見えています。派遣法も、導入当時は限られた専門職種だけでしたが、いまやどんどん拡大され、原則と例外が逆転し派遣労働は常態化しています。現に経団連は「『年収400万円以上』を対象とすべき」と主張しています。

マルクスの資本論第1巻第8章「労働日」に以下のような有名なくだりがあります。

大洪水よわが亡きあとに来たれ!これがすべての資本家および資本家国民のスローガンである。それゆえ、資本は社会によって強制されるのでなければ、労働者の健康と寿命に対し、なんらの配慮も払わない。肉体的、精神的萎縮、早死に、過度労働の拷問に関する苦情に答えて資本は言うーわれらが楽しみ(利潤)を増やすがゆえに、われら、かの艱難辛苦に悩むべきなのか、と。

マルクスは、資本の本質は「自分さえよければ後は野となれ山となれ」なので、資本を社会的に強制しなければならない必要性を言っています。しかも、今から150年も前にです(日本の幕末期)。労基法はまさに資本に対する社会による強制に外なりません。上記残業代セロ法案は、この強制を撤廃するもので、時計の針を150年も昔に戻すも同然です。

法案阻止のために全力を挙げましょう。


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